
飯川の光善寺に、寺小屋があった頃のお話です白馬村の子どもも、その寺小屋へ通っておりました。
手習いやソロバンが終わっても、子どもたちは遊んでいて、すぐに、帰ろうとしませんでした。
その度に、寺の法さまが、「早う、帰れや暗くなると、松の池から『めいしろ』が出て、池の中へひっぱり込むぞや」と、いいました。
すると、子どもたちは、あわてて、家路に着きました。家に帰ると、「お父う、お母あ、『めいしろ』とは、なんや。」と白馬の子どもたちは、法印さまが言った松の池の『めいしろ』のことを、しつこく、聞きました。
『めいしろ』とは、怖いもんじゃ。池のそばへよるんじゃないぞ。」と子どもたちにいいました。
しかし、その実、村のひとたちも、『めいしろ』の正体が何であるかを、知らなかったのです。
そこで、村の人たちは、正体を見とどけようとしました。三日三晩、交替で池を見はっていました。
すると、松の池の真ん中に、なんと、ムシロ一枚ほどもある大亀が、浮いて出てきたといいます。
『めいしろ』とは、「めいしり、めめしり」等、近在で、いろいろな呼び方をされています。
それは、「人間の腹の臓を食うもの」といわれ、池のそばへ、子どもを近づけないための「いましめ」ことばです。
たまたま、松の池を見はっていたら大亀が出てきたが、他の川や池では、違うものであったかもしれません。
また、『めいしろ』とは、架空の動物であったとも思われます。