第三十一話 七度半の使い

昔、石動山には、三百余りの寺社がありました。
北陸七ヶ国から、多くの人たちが、参詣に訪れて、たいそう、栄えていたそうです。

そのころ、多根村の人たちは、家業のかたわら、石動山へ行って、いろいろな仕事を手伝ったり、品物を用立てたりしていました。

石動山には、年間を通して、多くの法会や祭事が、催されていました。

そのうちには、一月十一日の「吉祝(きつしよう)」という行事がありました。

一山の衆徒が、当番院访に集まって、酒宴をする習わしでした。毎年、「吉祝」の日には、多根村の人たち、二十数名が、石動山仏蔵坊へ招かれた。

この時は、前日の十日の夜に、仏蔵坊から使者が、七回、多根村へ使わされる。

そして、八回目の使者と、途中の道で出会うように、頃合いを見計らって、村の人たちは、家を出発することにしていたといいます。

これを、「七度半の使い」と、いったと伝えられています。

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