
七尾街道の戻り橋のわきに、国分村の伝左工門さんが、 質屋を営んでいました。質屋の商売は、とても繁盛していました。
しかし、店のある場所は、野手道の一軒家でした。そのため、店が、たびたび、盜賊にねらわれ伝左工門さんは、困っていました。
ある時、またもや、盗賊に押し入られました。しかし、伝左工門さんの女房は気丈で、利巧な人でした。
そこで、女房は、一計を案じました。「あり金、全部あげますほどに、かわいいお金と、お別れするので少しの間、待って下さい。」といいなから、女房は、銭に、唇を押し当てました。
「しばしの別れになるけれど、また、逢える日を、 お待ちもうします。」といって、女房は、盜賊に、銭を手渡しました。
銭を手にした盗賊は、立ち去りました。
このように、女房は、何んとか、□紅をつけた銭を、盜賊に渡すことができました。
後日、町では、□紅のついた銭を使った盗賊が、役人に、すぐに、召し捕らえられました。そして、奪われた銭は、「紅づけの銭」として、ほどなく「戻り橋になったとさ(もどりましたとさ。)」