
昔、飯川の変電所の近くに小さい池がありました。その池には、粗末な橋が一本架かっていました。
ある時、その池のそばを一人の女が通りかかりました。
女は、 髪に美しい「こうがい」をさしていました。
女は、橋の上に来て、池に映った自分の姿をじつと見つめていました。髪にさした「こうがい」がとても似合います。
女は、その「こうがい」で、自分の髮をときあげてみました。その時、誤って、大切な「こうがい」を池に落としてしまいました。
さあ、たいへんです。その「こうがい」はその女にとって、とても大切なものでした。
女は、しばらく、思案していましたが、とうとう、その「こうがい」を取りに、 池の中へ入っていきました。
ところが、その池は、どろ沼でした。
池に入った女は、それっきり、あがってこなかったといいます。 それ以来、その池は『こうがい池』と呼ばれるようになりました。
戦後、耕地整理がされた時、その池は、なくなったということです。