第二十一話 エメキ鳥

中挟と江曽の境の山手の辺りを、「向かい山」といいます。
五月の中頃になると、この山から、人のうめき声に似た鳥の鳴き声が、聞かれます。

むかし、七尾に、「ひき山」つくりの名人がいました。
ある年の「ひき山」まつりの前日、今までになく、できばえの良い「ひき山」をつくりました。

そこで、名人は、一生懸命につくりあげた「ひき山」を、ふるさとの中挟の人たちに、見てもらおうと思いました。

そして、その夜、ひそかに町から在所へと「ひき山」を引き出しました。

しかし、一人の力では、「ひき山」は、どうにも動かず、とうとうその名人は、満身の力を出しきって、息絶えてしまいました。 でも、名人は、鳥となってこの辺りにすみついて、悲しい声で鳴いたそうです。

そして、毎年、七尾の「山見」の頃になると、悲しい声でうめき鳴きました。

そこで、この山の辺りを「むかい山」と呼びます。
それからは、村人たち、みんなこそって、七尾へ「山見」に出かける習わしとなったそうです。

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