第五十六話 飯川町の大ケアキ②

この大ケアキに、今ひとつの話がある。
この大木は、地上から約一丈ほどのところで、二股に分かれ、 ふた抱えほどもある大石がのっかかっているという。

弁慶が、義経と奥州へ落ちのびる際、ここを通り合わせ、その時、載せたものと伝えられている。

『天狗の話を村人から聞き、弁慶が、一夜、天狗と膝を交えて懇談した。

そして、主君の義経への追っ手が来たら、投げ落としてほしいと天拘と約束し、そこへ石を載せた。

その後、天狗が、しっかり、この石をもって見張っていたため、追っ手は、恐れをなして通らながった。

また、悪者たちも、この村だけは寄りつかなかった。
村の人たちは、天狗のおかげで、 末長く平和に暮らすことができたそうな。めでたしめでたし‥‥』

一説には滝尾村井田の、ある力持ちが、ケアキの上へ「バン持ち石」を、放り投げたと伝えられこれが、本当だと言われている。 現在、この大ケアキの住人は、「むささびJである。
それも、数匹数えられる。大ケアキから、神社の境内のさるすべり、松の木、もう一本のケアキへと、自由自在に飛びまわる姿は、まさしく「グライダー」のごとくである。

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