
音、若林に、「よもさ」という家がありました。その家の道端に、大きな木がありました。
誰いうともなく夜中に、その大木から、釣瓶が下がると、うわさが広がりました。
夜になると、誰ひとりとして、そこを通る者がいなくなりました。
ところか、在所で、一番気の強い男が、勇気を奮い起こし、「よし、それなら、おらが、その釣瓶をとって、正体を見とどけてやろう。」といって、夜中に、ひとりぽっちで、その大木の下へ出かけました
やがて、大木の下につくと、やはり、スルスルと、釣瓶が下がってきました。
その男は、恐る恐る、釣瓶に手を伸ばし、本物の釣瓶か、化け物か、その釣瓶をなで回してみました。しかし、特別変わったものではなく、本物の釣瓶でした。
そこで、男は、化け物でないとわかると、勇気がわいてきてぶら下がっている釣瓶を、おもいっきり引っ張りました。
すると、なんと、釣瓶の縄の先に、人がつかまり、大木から落ちてきたのです。
その男も、これには、びっくり仰天しました。在所の若者が、 二、三人、大木に登って、釣瓶を下げて、臆病者の肝だめしをやっていたことが、みんなにばれてしまいました。