第七話 江曽の嫁殺し田

江曽にたいへんひどい姑(しゅうとめ)がいた。毎日、嫁をいびり通していた。
嫁には、いつも、とてもできないほど、た<さんの仕事をさせながら、食べ物も十分に食べさせなかった。また、嫁の里帰りを、 一日も許さなかった。

泣きながらそれに耐え、「いつか、姑が心を入れ替えて<れる。」と思い、神さまや仏さまを信じて生きていた。

ある日のこと、嫁は、いつものように姑のひどい仕打ちにより、夜明け前から、田植えに追いまわされていた。

嫁は、積もる疲れと苦しみに耐えかねて、家に着くと、死んだように倒れてしまった。
これを見た観音様は、嫁を哀れに思い、その夜、嫁を里に帰してやった。そして、観音様が嫁になりすました。

そうとも知らず、姑は、次の日も、嫁を田へ追いまくりり、いっときも休んではならないと見張っていた。

嫁になりすました観音様も、あまりのひどさに、ついひと休みされた。姑は、そうはさせまいと、一歩、二歩、田に足を踏み入れたとたん、ズブズブと身体が沈んで、とうとう身動きがとれなくなってしまった。

観音様は、これをみて、はじめて姿を現され、「これ、姑よ、お前の嫁は、このようなひどい田で、’每日働いてのだ、かわいそうに思わないのか。心を入れかえよ。」と申された。

姑は、はじめて、自分のしだことのひどさがわかり、観音様に許しをこい、嫁にわびた。
その後、姑は、里から帰ってきた嫁と、仲良く暮らすようになった。

これを見た村人たちも、みんな、仲良く暮らすようになった。そして、この話を、いつまでも忘れないように、いつしか、この田を「嫁殺し田」と呼ぶようになったという。

(この田に、嫁が死んでしまったので、「嫁殺し田」と呼ぶのだという話もある。)

  • URLをコピーしました!